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Pewクジラ委員会 速報
 
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2009年2月13日(金)Vol. 137, No. 5
21世紀のクジラ保全に関するPEW委員会 会合
200929-10
21世紀のクジラ保全に関するPEW委員会(The Pew Commission on Whale Conservation in the 21st Century)は20092910、ポルトガル・リスボンに於いて開催された。Pew慈善財団(Pew Charitable Trusts)の後援により、Luso-American Foundation (FLAD)主催で行われた本会合は、Pew鯨保全プロジェクトの第3回会合である。これまでに開催されたイベントとしては、20074月に米国ニューヨークで開催された第1回シンポジウム“Pew Symposium on the Conservation of Whales in the 21st Century および20081月に東京で開催された第2回シンポジウム“Changing the Climate for Whales – Is there a Common Way Forward?”(副題:クジラ―未来への共通の解決策はあるのか?)がある。

Pewクジラ委員会は、クジラ保全の強化と国際捕鯨委員会 (IWC)のアジェンダに関する複雑な問題の今後の解決に寄与することを目指して設立された。Pewクジラ委員会は議論に係わる様々な立場を代表し、国際政治・外交において幅広い経験をもつ有識者をかかえている。

リスボン会合には、Pewクジラ委員会の委員13名の他、市民社会や学界、IWC加盟国からのオブザーバー25名が結集した。参加者は、外向的な救済手段や、IWCおよびその構成要素である国際捕鯨取締条約(ICRW)に関する合意分野と意見の食い違いがみられる分野について評価した。議論の内容は、議長報告の中に盛り込まれ、会合後の協議を通じたコンセンサスを待ってPewクジラ委員会 のレポートという形でまとめられる。同レポートはPewクジラ委員会のウェブサイトを通じてクジラ保護に関心をもつ各国政府や利害関係者に提供される。

議論の双方の立場について強硬な主張があるものの、数々の重要課題についてコンセンサスが得られた。例えば、今後のありかたについては、まったく新しい条約づくりをめざすことがベストではなく、むしろ現行条約の議定書(子条約)を起草し、ICWICRWをともに改革していくということで合意が成された。また、この問題を前進させていく上で、IWC年次総会に高官級の参加者が必要との点でも明白な意見の一致がみられた。一方、意見の相違が残ったのは、日本における沿岸小型捕鯨の公式許可、南洋における全ての捕鯨活動停止、各国政府ではなく、IWC科学委員会の配下に調査捕鯨を置く等の可能性に関する分野である。

国際捕鯨委員会(IWC)との関連におけるクジラ保護に関する歴史

大型鯨類のいくつかの種には、絶滅が極めて危惧される個体数500頭以下の種があり、その他の多くの種でも元々の個体数の何分の1という資源レベルとなっている。こうした現状を招いた要因は中世の早い時期から始まった商業捕鯨にある。1982年に国際捕鯨委員会(IWC)は商業捕鯨のモラトリアム措置を採択・発効し、1986年に商業捕鯨の歴史は公式に幕を閉じた。1960年代にはクジラの乱獲が行われ、年間約70,000頭のクジラが捕獲されていたことが、特に多くの種が危機に瀕する原因となったと考えられる。しかし、先住民による生存捕鯨や、調査捕鯨、あるいは1982年モラトリアムに対する公式な異議申し立てとして、今なお捕鯨が行われている。

1946年に締結された国際捕鯨取締条約 (ICRW、以下「条約」)は、“鯨族の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序のある発展を可能にするため”捕鯨に対する規制を現在行っている。 1949年の条約発効により、国際捕鯨委員会(IWC)が設置された。その主たる任務は、捕鯨規制のための措置を定める条約に対して、適宜、附表について調査・改訂を行うことである。これらの措置としては特に以下が挙げられている。すなわち、特定の種あるいは資源の完全なる保護;捕鯨禁止区域(サンクチュアリ)の指定;鯨類の個体数および大きさなどの捕獲枠の設定;捕鯨解禁期および禁漁期・捕鯨水域の規定;授乳期の幼鯨または幼鯨を伴う雌鯨の捕獲制限、などである。また、検査方法に関する諸規定を盛り込み「捕鯨船」の定義に航空機も含める定義の拡大を行った1956年の議定書改正を除けば、1946年以降、条約本体の改正は行われていない。

ICRWを公式に遵守するあらゆる国に対してIWCの加盟国になる道が開かれており、現在はメンバーとして84カ国が加盟している。各締約国からは政府代表(コミッショナー)が選ばれ、専門家およびアドバイザーらがその補佐を務める。IWCは毎年、会合を開く。2009年の年次総会はポルトガル・マデイラに於いて6月に開催予定だが、これに先立ってIWC科学委員会、およびIWCの2つの小委員会が行われる予定だ。

IWCには、発足以来、科学委員会、技術委員会、財務・運営委員会という3つの主要な委員会がある。技術委員会が活用されることはなくなったが、これに代わって新たな保護委員会が発足、2004年に初会合が行われた。その他、捕獲枠の設定や先住民の生存捕鯨、混獲、人為的な殺傷など、様々な問題に対応するため、13の小委員会が設置されている。

条約は、附表の改正は「科学的な知見に基づくものとする」と定めている。そのため、IWCは、主に加盟国政府からの推薦を受けた世界有数の鯨類生物学者、約200名から構成される委員会を科学委員会として発足させた。

科学委員会の情報と助言は、附表に盛り込まれるIWCの捕鯨規制を策定するための基礎を成すものである。附表の改正には、IWC委員による多数決で全体の4分の3という賛成票を必要とする。IWCの採択を受けた各種規定は、条約加盟国の国内法を通じて実施される。

近年、科学委員会は鯨類資源の包括的評価の作業に集中し、その結果、様々な鯨類資源の捕獲枠設定に適用する改定管理方式(RMP)が策定された。1994年に改定管理方式(RMP)はIWCの受諾・承認を受けたが、未だ実施には至らず、改訂管理制度(RMS)の交渉は決着がついていない状況だが、1996年以降の交渉の下、今後はRMPの遵守を確保するための検査および観察に向けた枠組み構築を行うことになる。

1982年のIWC年次会合で、すべての鯨類資源の商業捕鯨を1985/86年以降、一時停止(モラトリアム)するとの決議が行われた。日本、ペルー、ノルウェー、 ソ連が異議申し立てを行い、モラトリアムは自国に対して法的拘束力が及ばないと宣言した。日本はその後、異議申し立てを撤回した。アイスランドは、意義申し立てを行わなかったものの1992年にIWCを脱退し、2002年にアイスランドが再加盟した際にはモラトリアムへの遡及的な異議申し立てを行い、2006年に捕鯨活動を再開した。今日、ノルウェー、アイスランド、日本のみが捕鯨国と見なされているが、ノルウェーとアイスランドがそれぞれ“異議申し立て”として、日本は“調査捕鯨”と称して、捕鯨活動を行っている。 さらに、デンマーク(グリーンランド)、ロシア、セントビンセントおよびグレナディーン諸島 、米国(アラスカ)の、先住民コミュニティの一部が生存捕鯨に従事している。

モラトリアムに加えて、インド洋(1979)、および南洋(1994)に、2つのサンクチュアリが設定された。

IWCでの議論は高度に分極化している。捕鯨論争のなかで提起されている主な論点は、クジラを捕食動物と見なし漁獲管理目的で“処分(淘汰)”すべきであるという考えを容認できるかどうかという問題である。さらに、捕鯨支持国が提案しているモラトリアム解除と現行のサンクチュアリ廃止については、ICRWの目的として特に“鯨類資源の最適活用” と定められた規定に違反する規制なのかどうかという点が問題となっている。一方、反捕鯨国は、モラトリアム措置にかかわらず、近年、特に、科学調査を目的としてクジラを殺すことを認める特別許可証の利用によって、漁獲量が次第に減少していると懸念を表明している。IWCのデータによると、 2007-2008年に捕獲されたとの報告がある1933頭のクジラのうち、953頭が日本とアイスランドの調査捕鯨によるものだった。日本は、ミンククジラ759 頭、マッコウクジラ3頭、イワシクジラ100頭、ニタリクジラ50頭の捕獲を報告。アイスランドは39頭のミンククジラを捕獲したと報告している。2007-2008年には、モラトリアムへの異議申し立ての下、ノルウェーがミンククジラ597 頭、アイスランドがミンククジラ6頭を捕獲している。先住民の生存捕鯨としては、2007年に、ミンククジラ (西グリーンランド) 、コククジラ(ロシア・チャクチ族)を中心に377頭が捕獲されたと報告されている。

最近のIWC年次会合: IWCの最近の会合では、主要問題について一部に強硬な意見対立が続いている。20056月の第57回国際捕鯨委員会(IWC-57)では、モラトリアム撤廃や現行の南洋サンクチュアリ解除、沿岸捕鯨地域による年間150頭のミンククジラ捕獲許可をめざした、無記名投票による採決に係わるオプション拡大、RMS改正のための日本提案をIWCが否決した。また、南大西洋サンクチュアリ設定に向けたブラジル、アルゼンチンからの提案についても、可決に必要な4分の3の多数票が得られなかった。しかしながら、日本政府に対して、 南極における科学調査を目的とした捕獲に関する日本の提案を撤回もしくは改訂するよう強く要請する内容の決議が可決された。

20066月のIWC-58では、RMSの前進という課題が行き詰まりをみせているとの認識がなされた。南大西洋サンクチュアリに関するブラジルおよびアルゼンチンの提案は投票にかけられなかった。沿岸捕鯨地域による年間150頭のミンククジラ捕獲枠の設定、および南洋サンクチュアリの廃止についての日本の提案は、再度、否決された。 一方、日本をはじめ、その他数カ国の共同提案による、セントキッツ宣言が採択され、“IWCの機能の正常化”に向けた取組みが宣言された。

その結果、 IWC正常化会合” 20072月、東京(日本)に於いて開催された。同会合の目的は、資源管理機関としてのIWCの機能を再開させるため具体的な措置を提示することであった。日本政府はIWC加盟国すべてを会合に招聘していたものの、実際に参加したのは35カ国のみ。この点についてIWCからは公式な制裁措置がとられなかった。IWC加盟国の26カ国が不参加を決定した。同会合の結果、2007年のIWC年次総会に対し、無記名投票の要請や沿岸地域のミンククジラ捕獲枠の拡大を求める日本提案などを含めた一連の勧告が提出されることになった。

しかし、2007年、2008年の会合では、意見の食い違いが残った。20075月の IWC-59では、南大西洋サンクチュアリ設定に向けたブラジル・アルゼンチンの提案が再度、投票に付されたが、4分の3の多数票が得られなかった。

20086月、チリ・サンチアゴに於いてIWC-60が行われ、同会合以降にも様々な問題を取り上げるための小委員会が数多く追加設置され、鯨類資源; 先住民生存捕鯨; 特別許可証; 環境問題; 小型鯨類; 保全委員会などについての議論が行われた。また、コンセンサスで、小作業部会(SWG)を設置することが合意され、IWCの将来について更に議論・交渉を進めることとなった。2008年下半期には2回の小作業部会での会合が行われ、IWCの将来に関する2009年中間会合に向けて、初期の審議の結果を報告することになった。

その他の関連会合:「移動性の野生動物種の保護に関する条約」(CMSまたは「ボン条約」)のような多国間条約の下でも、鯨類の保全についての取組みが行われている。2002年の第7回ボン条約締約国会議(COP-7) では、ナガスクジラ、イワシクジラ、マッコウクジラを条約の附表IおよびIIの対象リストに加えることを決定。南極ミンククジラ、ニタリクジラ、コセミクジラについては、附表IIに掲載することとした。その3年後に行われたCOP-8では、鯨類の保全に関する決議8.22が採択され、鯨類保全のすべての関連セクターでの一本化、ならびにCMS事務局、科学委員会、IWC、その他の国際機関との連携が奨励されている。

一方、2002年には、ワシントン条約(CITES)では、ミンククジラ、ニタリクジラの附属書IからIIへの移行案が否決された。2004年には、RMSの完了と実施を要請する日本の決議案、ならびに、ミンククジラの3個体群を附属書IからIIへ移行させるという日本提案が、無記名投票によって否決された。

PEWクジラ保全プロジェクト:永年の交渉多極化を招いた高度に意見の分かれる一部の問題に対するIWC締約国の昨今の取組みを受け、2007年にPew環境グループはPewクジラ保全プロジェクトを発足させた。このプロジェクトは、鯨類保全の強化とIWC改革という目標達成に寄与する解決策の推進を目的として立ち上げられた。

2007年、2008年には、このプロジェクトの一環として、Pewの後援により2回のクジラ・シンポジウムが行われた。第1回は20074月に米国ニューヨークに於いて開催。クジラ保護団体、科学者、政府関係者など“IWC界”の内外の人々が一同に会した。賛否両論あるものの、現行の取り決めがクジラ保全に関して利用可能な最善策かもしれないという考え方もあった。状況改善策については多くの提案がなされた。例えば、調査捕鯨の利用廃止または制限のための条約改正; 新たなルールの留保(または免除)のための条項撤廃; 独立世界委員会、閣僚級首脳会談、または相互合意に基づく法的拘束力をもつ調停・仲裁手続き等のような、“より上位” の監督機関を通じた紛争解決などの提案である。また、捕鯨のための政府補助金の問題を含め、捕鯨の経済学についても調査研究すべきであるとの提案もなされた。

2Pew鯨類シンポジウムは20081月、“A change in climate for whales(クジラの環境変化)”をテーマに掲げ、東京・国連大学本部に於いて開催された。議論の中心となったのは、数値目標の設定を含め、“調査捕鯨”に関する明確で合意ある定義づくりの必要性と、日本の見解に対するより外交的なアプローチの必要性についてであった。IWCプロセスの将来についてのラウンドロビン・セッションでは、特に、根本的な懸念事項、科学の役割、NGOの参画、他の機関との協力についての議論が行われた。

Pewクジラ委員会は2009年に発足、そうした取組みのとりまとめや、捕鯨専門家や市民社会の双方からのインプット募集、ポルトガル・マデイラに於いて20096月に開催予定の第61IWC年次会合でのIWC交渉前進の一助とする提言の作成を目指している。Pewクジラ委員会は、議論をとりまく様々な立場を代表する、国際政治・外交に幅広い経験を備えた有識者を抱えている。

会合レポート

リスボンでのイベントは、28日(日)夕方からのレセプションで幕を開けた。 Pew環境グループのCharles Foxが歓迎の挨拶を述べた。捕鯨論争を巡る“手ごわいチャレンジ”について触れつつ、Pewクジラ委員会が政府見解からは独立しているが、外交の現実については意識しているとし、本会合が、最近レポートを発表した、国際捕鯨委員会 (IWC)の小作業部会(SWG) からの提案を踏まえ、おそらくは強化していくものだと思われると述べた。

Pewクジラ委員会の議長のPeter Bridgewaterは、IWCの業務方針に対する不安感を各国の政府が共有していると指摘し、並列プロセスとしてのクジラ委員会の機会について強調した。 また、同委員会が捕鯨論議に係わる4つの相互関係ある主要側面、すなわち、鯨類に関する文化的側面、クジラの個体群を理解するための科学的アプローチ、保護区域またはサンクチュアリの活用に関する見解、最も機能する法的手段のタイプについての考え方、強力なコンプライアンスを担保する方策―についての考え方の違いである。Bridgewater議長は、参加者に対して、幅広い視点をもつよう促した。

公式な会合は、9日(月)午前から開始され、オープニング・セッションと自己紹介に始まった。その後、“クラスター”と呼ばれるテーマ分野別に、1)科学と予防管理、2)現在の捕鯨活動の概要、3)コンプライアンスと施行、4)保全ツール、5)その他の法規との関連についてのセッションが続けられた。翌朝は、それまでの議論を振り返り、意見の一致・不一致がみられる分野、本会合から得られるだろう成果について確認していく作業を行った。このサマリー・レポートでは、こうした議論の内容とその成果について概要を記す。

オープニング・セッション

29日(月)午前から公式に開会となった。本会合はチャタムハウス・ルールに則って行われた。従って、スピーカーの発言内容は、プレゼンターが会合アジェンダに記載している内容を除いて、あくまでも各スピーカー個人に帰属するものとなる。また、代表者は個人的な見解を披瀝するものであり、必ずしも出身母体である政府や組織の見解を反映するものではないという留意点について説明があった。

Luso-American Foundation専務理事のCharles Buchananは、同基金の海洋問題に対する関心について強調しながら、同基金の歴史とその独立性について述べた。底引き網漁とサメ漁に関してはPew環境グループ 、沿岸環境指数の特定に関しては米国政府とEUと、協力を行っていると説明した。また、ポルトガルの海洋戦略の整備における同基金の役割についても概要を述べた。

ポルトガル環境国務大臣のHumberto Rosaは、捕鯨議論に対するポルトガル政府の取組みについて強調。鯨類の非致死的利用へと平和的に移行しているとし、特に、ホエールウォッチングについて述べた。 また、モラトリアムと鯨類保全の向上を支持する立場から、交渉におけるコンセンサス形成と理解を求めた。現在、政治的膠着状態にある2つの立場を紹介しつつ、合意に至るには寛容さが必要だと釘を刺した。また、公害や気候変動、海運、騒音公害などに対応するための“21世紀のIWCづくり”を求めた。さらに、2007年のバリ気候会議での自身の経験を踏まえ、交渉が行き詰まっているときには閣僚の関与が重要だとし、IWCの前進に向けて、マデイラに於ける6月のIWC年次会合には他の閣僚メンバーも出席するよう呼びかけていくと語った。

Pewクジラ委員会のPeter Bridgewater議長は、IWC加盟国は2つの陣営に分かれているものの、それも時間とともに変化しうると指摘。SWGのレポート発表後に本会合が開催されたのは実に良いタイミングだったと強調し、Pewクジラ委員会は今後の打開策を形成していくために独自の機会を設けていくと述べた。 さらに、議論がどのような意味を有しているのか、また、鯨類の非致死的利用に関して持続可能な利用と衡平な便益共有のありかたについて、もっと注目していくよう求めた。

その後、Pewクジラ委員会のメンバーは、簡単に自己紹介を行い、それぞれ捕鯨論議に関連づけた個人の経験について紹介し、前座となるスピーチが行われた。

科学と予防管理(SCIENCE AND PRECAUTIONARY MANAGEMENT

豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)Bill de la Mareは、捕獲量の設定に係わる実際上の課題を取り上げ、それが改定管理方式 (RMP)を巡る論争の理由となっていると指摘したが、RMPは保全と産業という双方の目的を満たすように設計されており、究極的には両者には共通点があるはずだと述べた。また、鯨類の個体数について目視調査や捕獲データといった信頼できる方法で入手した情報を元に特定の資源の中でどれだけの鯨類比率ならば安全に捕獲できるかを算定するRMP捕獲枠アルゴリズムについて詳しく説明した。

また、より良い情報は捕獲枠の増加につながり、不確実性の高さは捕獲枠の低下につながると指摘し、データ提供が捕鯨産業にとってインセンティブになると強調した。捕獲枠アルゴリズムは、世界の変化、疾病、異なる資源動態、データの偏向性や不完全性等を含めた多くのシナリオを包含するように設計されていると述べ、例えば、沿岸捕鯨計画にみられるように、複数の鯨類が存在する区域である特定種の鯨類が他種よりもはるかに多く捕獲される傾向にあるという事実を無視すれば、各種調査が、持続可能ではない捕獲枠の設定につながるのだと説明した。また、例えば、ゆっくりとしたミキシング、 領域行動、 性・年齢依存の移動・分布域などのような、空間的に複雑な個体群のモデル化の課題についても概説した。

鯨類の種別毎の捕獲枠設定については、ランディング時に系群の血統をチェックする遺伝子検査が可能であるとし、捕鯨産業がこうした検査を実施するためのインセンティブを設ける必要があると述べた。

その後、討議された主なトピックは次の通り:クジラ調査の最適頻度; 捕獲枠の年変動の高さを低減する必要性; クジラ調査の手法と精度; 問題となっている“科学”が政治化する度合い等。 De la Mareは、捕獲枠アルゴリズムは科学的に健全かつ客観性をもつと一般的に受け止められていると説明したが、鯨類資源の分布に関しては一部に不確実性が残っており、それが選択的に仮説を否定することにつながる余地を残していると述べた。

この議論は捕鯨を続けるべきであるとか、捕鯨が継続可能だという仮定を元にした演繹的な論理で成り立っているとの指摘があったため、Bridgewater議長は「この議論は、機能不全に陥っているIWCを抱える危うさに端を発するものであり、健全なる科学上の手続き・管理を確立する必要がある」と明言した。さらに、依然としてRMPIWC用語集に正式に入っているものではないと強調した。

現在の捕鯨活動の概要(OVERVIEW OF CURRENT WHALING ACTIVITIES

現在の捕鯨活動の概要を述べつつ、国際動物福祉基金(IAFW)・IWC科学委員会メンバーのRussell Leaperは、国際捕鯨取締条約(ICRW)の持続可能性という目標について強調し、ICRWには沿岸捕鯨の定義が欠如しているとし、この用語は必ずしも海岸線からの距離とは関係ないとの考えを示した。

また、ノルウェーが一方的に調整したRMPをベースに捕獲枠を設定、IWCの科学的助言ではなく自国の希望捕獲量を基準にしていると指摘した。また、アイスランドの捕鯨計画の今後の行方については、前政権が5カ年分設定した年間捕獲枠があるが、不確実であると述べた。また、日本の捕鯨計画の特別許可の概要について報告する中で、「日本政府の南極での調査計画についてのIWCのレビュー(再検討)には、日本の調査計画を継続すべきかどうかという点については明示していないものの、調査の目標は達成されていないと示唆されている」と伝えた。

また、太平洋ミンククジラのO系群、J系群の事例を用いて混在する多魚種の資源管理の課題について説明し、科学委員会が引き続きJ系群の状態ならびに捕獲された鯨からの遺伝学的データの共有が完全に行われていないことについて憂慮していることを強調した。また、科学委員会が現在、特別に暫定的な助言を求められていることに懸念を抱いていることや、最近の一部の種についての調査不足、および個別の漁港周辺に集中した沿岸捕鯨の影響について説明し、混獲分の算定を含めた調査上の課題について指摘した。

最近の評価の欠如に対する参加者からの懸念を受けて、科学調査のコミュニティには一部の種について完全な評価を実施するための資源量・分布に関する十分なデータが無い点が注目された。

ある参加者からは、IWC 科学委員会の会合がIWC年次会合の直前に行われるため、代表団のメンバーが科学報告書を十分に吟味する時間が足りないことが残念だとの声があがった。また、別の参加者からは、科学的なインプットに係わる透明性とタイミングは科学における信頼性の欠如を反映しているとの意見が寄せられた。数名の参加者は、IWCの明白な“機能不全”はRMPに直接関係するというよりはIWC自体のガバナンスの問題に関するものだとの感想を述べていた。ある参加者は、一部のアフリカ諸国はこの問題について何らかのポジションに立つことに後ろ向きだという懸念を取り上げながら、議論にアフリカからの専門家を関与させることが必要だと強調するとともに、“鯨は魚を(大量に)食べる”との感情論が一般人の中で優勢になっていると述べた。

調査捕鯨によって目に見える結果が得られていないとの発言を受けて、ある参加者は、日本が近年、科学委員会に対して182本の調査論文を提出し、ピアレビューを受ける定期刊行物の中で92本の論文を発表しているという実績について指摘していた。

数名の参加者からは「調査捕鯨はモラトリアムと相容れない」との見解が示された。しかし、先住民生存捕鯨もモラトリアムに平行して行われており、調査捕鯨の支持国は今後その論拠の強化が求められるはずだとの所感も寄せられた。

コンプライアンスと施行 (COMPLIANCE  AND ENFORCEMENT)

ワイカト大学(ニュージーランド)のAl Gillespieは、混獲、コンプライアンス(法令順守)、モニタリング、反対・留保事項について概観した。 国際法は、相互合意に依拠するものだが、最近はコンプライアンスや施行のメカニズムを重視する傾向が強まっていると強調。非順守および非協力との違いを挙げ、各国政府は非順守を回避する傾向にあると指摘した。

さらに、混獲への配慮は漁業協定に共通しており、混獲を緩和するためのインセンティブづくりに関する議論に集中するべきだと指摘した。混獲による鯨の取引を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」 (CITES)によって取り締まるべきであるが、ローカルなレベルでの活用についても対処するべきであると述べた。

コンプライアンス及びモニタリングの議論では、Gillespieは、DNAメソッドと従来の漁業でのアプローチを統合させ、船舶登録、陸上・洋上での検査、船舶モニタリングシステム、ポート・ステート・モニタリングを実施するよう提案した。また、DNA情報の所有権および情報へのアクセスの定義に係わるIWCの課題についても述べた。 

反対と留保については、相互の協力と信頼が重要であると強調。反対意見を投じる権利を排除してきたフォーラムのこれまでの成果はまちまちであるとし、オプト・アウト条項の変更は新たな条約の草案づくりを必要とすることになると示唆した。

Gillespieのプレゼンの結論として、コンプライアンス小委員会をIWC内に新設し、輪番制で公平な地域毎の代表を据え、懲罰よりも問題解決を重視する仕組みづくりの提案があった。また、検査の重要性についても強調された。

その後の議論では、「違反」の定義がICRWの下での義務とする必要があるかという点が取り上げられた。「オプト・アウト」問題を取り上げる前に、相互理解に基づく協力関係の正常化こそ優先的に取り上げなければならないとの意見が出る一方で、反対を唱える権利を無効にするのは過激な措置だという意見も出された。また、別の参加者は、漁業のコンプライアンスツールは単独のコンプライアンス・レジーム内でDNA登録簿と合わせて使われたことはないと指摘し、コンプライアンスの義務履行コストに対する懸念も示された。

全く新しい条約の起草という選択肢について広範な議論が行われた。この選択肢をPewクジラ委員会として推奨することを強く示唆する意見もあったが、現行の条約は作成当時の時代を反映するものであり、科学調査という名目での動物の捕獲という点については、いかなる近代法も科学委員会の事前承認と捕獲枠を必要とすると規定するだろうとの見解で合意がなされた。 一方、条約の議定書を追加するとの案にも賛成意見があった。

また、コンプライアンス・メカニズムの費用を捕鯨国と反捕鯨国の間で折半するという可能性や、会合やコンプライアンス及びモニタリングのメカニズムを含めてIWCプロセスに係わる経済・財政コスト検討の必要性についても議論が行われた。

ある参加者からは、政府間の不信感の強さと一般大衆の強い感情を鑑みると、捕鯨に関してはコンプライアンス・メカニズムが “やりすぎ”というリスクはほとんどないとの声があがった。 しかし、他方では、捕鯨と世界の大規模な商業捕鯨と比較できるものではないと指摘し、より強力なコンプライアンス・メカニズムの必要は規模の問題をあらためて考えさせるとの声があがった。

当該の留保のため協力と根拠を提供する継続的な義務についての指摘があり、参加者らは、他の条約の下での留保条項の使用を想起した。

IWCプロセス内部にローカルなレベル(地元)が不参加であることへの懸念を受け、IWC内の地元のコミュニティからの代表者がいることや、現在の会合にも彼らを招聘していた事実を引き合いに出す者もあり、より幅広い利害関係者の参画をもとめる者もあった。その他、 “機能不全の現況”を示し、富裕な国々が経済原理やインセンティブを利用しながら途上国の捕鯨問題に対する政策に揺さぶりをかけていることが不安だとする声もあがった。

また、様々な意見が根深く定着している中で交渉を前進させていくという難題についても討議されたが、ある参加者からはどの締約国も自国のポジションを変更するようなインセンティブを持たないと示唆し、この問題に対して反捕鯨国は強く感情的な反応を示していると言及していた。

保全ツールCONSERVATION TOOLS

WWFインターナショナルのSue Liebermanは、ICRWが保全の条約なのか、あるいは管理のための条約なのかという点が曖昧であると指摘し、それが根本的な問題となっていると述べた。脅威としての捕鯨問題を、混獲、生態系の損失、劣化、船体衝突、化学物質による汚染や騒音公害、石油・ガス開発、気候変動など他の脅威も含めた幅広い意味合いの中で検討するべきだと述べた。 また、種の保全計画には5つの要素があるとして、1)政策と法令、2)生息環境の保護と管理、3)資源保護・管理、4)保全のためのインセンティブ、5)啓発について説明した。

利用できる政策オプションの中では、捕鯨国によるCITES附属書Iへの鯨類の記載に対する留保撤回および現行のCITES取引規定の受け入れを提案し、IWCのすべての加盟国は以下の内容で合意するよう提案した。

  • いかなるCITES規制対象種に対しても格下げ移行をもとめる提案を提出しないこと。

  • いかなる新レジームでもコンプライアンスを確実にするため、DNAモニタリング制度を含めた、鯨製品取引のモニタリングが必要。

  • 単一の鯨類資源をめぐって対立する可能性がある場合は特に、致死的捕鯨よりもホエールウォッチングに重点を置くこと。

  • ホエールウォッチングの振興およびホエールウォッチングの基準整備におけるIWCの役割の強化。

例えば、南半球ではホエールウォッチングだけを許可する完全保護区を確立し、北半球沿岸地域の一部では国際的な管理の下で限定的に捕鯨を認めるという選択肢を認めるといった、地理的な区別による資源管理枠組みの創設。

他の脅威について取り組むためにICRWの近代化をめざすよりもICRWを放棄する形で、他の既存の条約の下ですべての捕鯨問題を取り上げるという選択肢についても討議がなされたが、全く賛成意見が集まらなかった。ある参加者は、確固たる科学的な根拠なしにCITES附属書Iの規制対象種として記載するのは望ましくない前例となると強調した。しかし、別の参加者は、市場に出回る鯨肉の出自と性質を特定することは一般的に困難であり、IWCが大型鯨類をCITES対象種として掲載することを特別に要請したという経緯があると述べた。

捕鯨国からのインフラ整備や開発促進をエサにカリブ海の非捕鯨国のポジションが誘導され、影響を受けているとの懸念が示され、こうした経済的な問題を捕鯨問題の社会経済的側面の議論として取り上げるべきだとの指摘があった。

また、捕鯨とホエールウォッチングとの間で利害対立が生じているアイスランドの例が挙げられ、アイスランドでは捕鯨に補助金が交付されている一方でホエールウォッチングが次第に儲かるビジネスになってきている中、現在、アイスランド議会で審議中であるという話があった。ある参加者からは、南半球のホエールウォッチングの重要性が指摘された。ホエールウォッチングは同地域で行われる捕鯨を妨害するものではないが、管理の観点からは困難になるとの指摘があり、2つの活動を地理的に分離する案を支持するとの声があった。IWC全加盟国に対しては本件についてIWCで十分な審議を尽くすよう求め、IWCに対しては鯨の非致死的利用が有効な管理オプションであることを認識するよう要請した。

ある参加者は、捕鯨活動に対する直接・間接的な政府補助金などの支援を廃止することが保全措置として有効であると強調していた。また、別の参加者からは、鯨製品の需要が増大することはないとの仮説に対し、魚粉や化粧品、食品、健康補助食品として今後利用される可能性もあるとの警戒感が示された。

その他の法規との関連 (LINKS WITH OTHER INSTRUMENTS)

Pew環境グループ法律顧問のDuncan Currieは、ICRWのガバナンスの状況と今後の手続き改正の可能性についてプレゼンテーションを行った。その中で、ICRWと国際法との調和が必要だとし、ICRWの目的の明確化を求め、民主主義、透明性、費用対効果、説明責任という目標の共有に基づき、協力することが重要であると強調した。

Currieは、予防的アプローチや統合管理、生態系アプローチ、環境影響評価について学んだ教訓について触れた後、ICRWと国連海洋法条約(UNCLOSと比較しつつ、意志決定プロセスやモニタリング、施行、紛争解決手続きの面でICRWが国際的なベストプラクティスの基準を満たしていないと指摘した。

また、ICRWの改正や修正のための政策オプションや制約事項について概要を述べ、合意済みの時間枠の中で、例えば2012年までに新たな条約または議定書を締結するといった成果を出すことをPew環境グループが要望していると強調した。また、IWC内部での交渉、外交会議や国連総会への問題提起などを含め、改正のために今後可能なアプローチを紹介した。

さらに、Currieは、サンクチュアリ創設のための手続きについて紹介した上で、ICRWの一時的なサンクチュアリ創設のための手続きには理論的根拠が無いとし、初期5年間に南大西洋サンクチュアリを創設するというSWGの提案に懸念を示した。 

RMPに予防原則が組み込まれているのかどうかという点について参加者による議論が行われた。現行のサンクチュアリがICRW5(保全規定)に記載された条件をすべて満たしているのかと一参加者が疑義を唱えた。それに対し、Currieは、IWCの現行規則の中で市民社会の関与に係わる懸念事項を対処しうると示唆した。

また、非政府組織(NGO)が捕鯨国、反捕鯨国、双方の世論形成に与える影響についての参加者の言及に対し、NGOの支援なくしては何も決議が出せないだろうと述べ、IWCでのNGOの公式参加を要請する提案を行った。また、別の参加者は、政策と科学を統合するという小国の国内NGOが有する“素晴らしい能力”に注意を促し、NGOアドバイザーのための政府代表(delegation)の席を用意するよう提案した。すでに数多くの代表団がNGOを参加させているが、現実的には各国政府団の席に座るNGOは、その政府の規定に縛られるとの指摘があった。その後、IWCが、他の国際会議では一般的な慣行となっているプレナリー(本会議)の場でのNGOによる発言を認めるよう提案された。

サンクチュアリに対する新たなアプローチの必要性という点については、ある参加者が、先住民生存捕鯨と地元住民(ローカルコミュニティ)による小型沿岸捕鯨については一部例外を認める形で、世界の海洋すべてをサンクチュアリとして指定することが提案された。

また、産業界のIWC会合への参加や、紛争解決メカニズムの緊急な必要性についても討議された。1982年のモラトリアム合意の成立時には恒久的なものを意図したのではなく、再評価できる状況にあるとし、モラトリアム及びサンクチュアリの双方に科学的根拠の提示が必要だと一参加者が指摘した。

交渉された合意の諸要素ELEMENTS OF A NEGOTIATED AGREEMENT

210日(火)には、Bridgewater議長が前日の議事次第を総括。合意されている分野、意見が対立している分野を特定し、交渉を進めていくことを提案した。

ある参加者からは、IWC内の不信の歴史は、NGOの排除ではなく、情報へのアクセス欠如から派生しているとの所感が寄せられた。また、Pewクジラ委員会で沿岸捕鯨とRMP向けの調査捕鯨の必要性について討議しなければならないと別の参加者が強調し、同委員会がその報告書の中でホエールウォッチングの重要性を強調しているが、全般的なコンセンサスを考慮し、突っ込んだ議論は差し控えていると示唆した。

Pew環境グループ法律顧問のDuncan Currieによるプレゼンテーションが行われ、世界的なホエールウォッチング産業の過去15年間の著しい成長、ならびに調査捕鯨の年間収入・支出について説明があった。それに対し、調査捕鯨は利潤目的で実施されているのではないとの意見があった。

Currieは、SWGレポートに盛り込まれた異論の多い問題点をまとめ、J系群に特化した暫定的な管理上の助言とともに今後5年間にミンククジラのO系群に対する割当量を設定することがレポートの中で提案されていると述べた。また、船籍、航海、鯨肉利用、小型沿岸捕鯨のモニタリング・施行レジーム等の定義も提案されているとも述べた。

特別許可を受けた捕鯨については、報告書の中で2つの選択肢が提示されているとした。すなわち、1)南極 ミンククジラの5カ年段階的停止および南洋におけるザトウクジラやナガスクジラの捕獲停止、または、2)南洋におけるミンククジラ及びナガスクジラの5カ年の年間捕獲制限設定および北西太平洋のミンククジラ, イワシクジラ, ニタリクジラ, マッコウクジラの捕獲枠設定である。サンクチュアリについては、Currieは、同報告書で強調されている5カ年の南大西洋サンクチュアリ設定に対するSWG勧告について述べ、これが4分の3の多数票により無期限に延長可能であると指摘した。

ホエールウォッチング管理の促進に対するSWG報告書の提言内容とホエールウォッチングの是非についても議論が行われた。ホエールウォッチングによって今後、負の結果が生じる可能性があるのではないかという疑問を受けて、ホエールウォッチングへの激しい圧力が小型鯨類の生息地放棄と繁殖数減少につながりうることを示す証拠があるとの指摘が寄せられたが、大型鯨類への影響に関する情報が不足しているとのことだった。

ホエールウォッチングの過剰規制に対する懸念が示される一方で、IWCによってホエールウォッチングについて検討するのは規制を課すためというよりもベストプラクティスに関する情報の促進にあるとの指摘も挙がった。

SWG報告書の中の5カ年の暫定期間中に必要とされる行動についてのセクションについては、動物福祉や混獲、小型鯨類については全く提案部分が無いが、下記の提言があると指摘した。

コンプライアンス及びモニタリングの要素に、船舶モニタリング制度や透明性あるDNA登録簿、捕獲文書化制度を確実に盛り込むようにすること。

懸念事項および優先事項、紛争メカニズムの必要性、海洋ガバナンスに対するアプローチについて、1949年以降に生じた変更を反映するためICRWの改正を求めるか否かを評価すること。

機関の設立に関する協定の修正との関連で、反対手続き改正条項を合意した際、北西大西洋漁業機関(NAFO)が採用したアプローチを検討すること。

プレゼンテーションの結論として、報告書がモラトリアム存続を提案することを指摘していた。

IWCと海洋ガバナンスに関連あるその他の機関やプロセスとの関係について考察する必要があるという点で参加者の見解は一致した。また、南大西洋サンクチュアリの議論は、地域協力・管理の基本原則に触れることから、捕鯨議論の枠を超えていることが指摘された。

ある参加者からは、IWC内部の不信が続いているとの指摘があり、現行プロセスに関する懸念を示す中で今次会合にIWC 事務局が出席していないことが遺憾であり、活動内容の重複を警戒する意見があった。さらに、日本が参加する交渉を通じて、問題の解決を図るべきだとし、IWC政府代表(コミッショナー)レベル以上の高官クラスの政治的な意志決定が必要であると論じていた。

IWC 事務局との協議で、PewプロセスはIWC事務局の関与なしで進行すべきであり、事務局は主要な戦略的アイディアをPewクジラ委員会から受領することには関心を示していたとの見方につながったという経緯が明らかになった。 

ある参加者が、Pewクジラ委員会がIWCに対して単に提言を付すだけではなく、IWCプロセスに関与するテクニカルオフィサーと共にプロセス前進に向けて直接関与するよう提案した。別の参加者は、20096月のポルトガル・マデイラに於けるIWC年次会合の場に変化をもたらすべく、情報提供を行って、関係する閣僚らを通じて行動を起こすことを提案していた。 こうした文脈から、政策に関連した研究ならびに意志決定に求められる科学情報の定義の必要性についての議論が行われた。 

参加者数名が問題解決には日本の役割が重要だと指摘。日本の国内の環境リーダーシップのレベルの高さについて言及があった。 

Pewクジラ委員会のマンデートとIWCプロセスの中での役割については広範な議論があった。Pewクジラ委員会が様々な利害関係者の間にオープンで建設的な対話の場を設けることにより、IWCの力学と働きに変化をもたらす一助となりうると一部参加者が指摘した。Pewクジラ委員会メンバーに対しては、個々人の影響力を駆使して、IWCプロセスに各国の政治家を関与させるよう要請があった。次回のIWC会合で解決策を進展させるため、政府代表団の中に作業を推進できるだけのハイレベルの政治家を含めるよう提案された。

SWG プロセスに対する支援を公式に表明することを多くの参加者が提案していた。ある参加者からは、今次会合に先立って発行されたPew政策文書の内容には偏りがあるとの指摘があり、Pewクジラ委員会がSWGの勧告への批判を止めるよう要求していた。一部参加者は、SWG報告書が市民社会からのインプットを何ら受け付けていないことに対して遺憾の意を示していた。また、そうした意見の中に、捕鯨活動の再開が認められるという中で、割当量のようなSWG提案の詳細項目について、今後5年で定義していくというような猶予期間を残すべきではないとの指摘があった。SWG報告書がアイスランドやノルウェーの捕鯨活動にも、鯨製品の国際取引についても適切に対処していないとの指摘もあがった。 

海洋ガバナンスにおけるIWCの象徴的な重要性についてスポットをあてながら、諸慣行に対する5カ年という短期的な調整とIWCを海洋ガバナンス上でより能動的な役割を行使さえるという長期的な検討課題について重視することが重要であるとの提案があった。それに関して、持続可能な開発委員会(CSD)2014年度には海洋事業を重点項目とした作業計画を立案していることも利用していくべきだという意見が述べられた。

マデイラ会合に著しい成果を期待しないよう釘を刺す声もあがっていた。 IWCがどのようにして各国政府の協調を促進するようなインセンティブを提供できるのかという疑問の声もあがった。IWCの進化する役割を反映すべく、 国際捕鯨委員会の名称の“捕鯨(Whaling)”を “鯨(Whales)”へと変更すべきだとの提案があった。「ハイレベルの参加と協力」のように、これまでのグループの提案内容を単純に繰り返していると戒める意見もあった。 

ラウンドロビン・セッション (Roundrobin Session) 

英国放送協会(BBC)のRichard Blackがラウンドロビン・セッションの司会として、Pewクジラ委員会の主な見解の把握と新たなアイディアの発掘に努めた。まず、短期的な展望について集中的な議論が行われた。多くの参加者から「調査捕鯨」は個々の国家の管轄ではなく、IWC科学委員会の下で管轄・監視されるべきだとの意見が出た。そうした点で、各国政府に調査捕鯨の特別許可証発行を認めるICRW8条の撤廃に多くの参加者が支持を表明した。この問題は、調査捕鯨による市場での鯨製品の販売について記載する条項を撤廃することによって即座に解決できるとの意見もあった。 一方で、非致死的な科学調査手段がだんだんと進歩し、利用可能になっていく中で調査捕鯨が増加しているというパラドックスに対する指摘もあった。捕獲枠の設定は他のフォーラムの場でも国際的にベスト・プラクティスであると考えられていると数名の参加者が指摘した。ICRW本文の改正は困難であるとの懸念を受けて、ある参加者から2008年のチリIWC年次会合では“信頼醸成の演習として”手続き規則の一定の変更が合意されたことが想起された。科学委員会による「調査捕鯨」のレビュー・メカニズムについての討議が続けられた。 

南洋捕鯨の削減という点からすると5カ年という期間も長すぎるとの意見があり、通常の反捕鯨的な論議よりも気候変動などの新しい課題について日本が検討することが、この地域における捕鯨停止の動機付けとなるとの提案もあった。「南洋」は誰かの所有物ではなく、南半球の国々だけがガバナンスのありかたを決定できる訳ではないとの意見もあった。また、南極海における活動に関して、ICRWと南極条約との間の対立があるとの指摘もあった。 

長期的な展望に関するオープニング・ディスカッションでは、Black議長がPewクジラ委員会メンバーに対して以下のリスト[RMPの完了と実施; 反対及び留保に関する規定の改正; 非致死的な利用の認識の明示; 紛争解決メカニズムの導入; 違反した場合の罰則規定の導入による混獲の取締まり;プロセスにおける国家以外の行為者の参加;科学プロセスと政治プロセスの分離 “新たな優先課題”を反映させたIWCの名称変更; 8(調査捕鯨)の対応]の中から、各自が考える優先項目のトップ3を挙げるよう促した。 

その結果、トップ項目として挙げられた課題は以下の通りであった。すなわち、紛争解決メカニズム; 罰則方式による混獲規制; 反対・留保に関する規定である。そうした中で、それぞれの選択肢に対して優先順位をつけることを差し控える参加者も数名あった。IWCのガバナンス改善措置と鯨類保全の目的達成の一助となる措置との違いを、ある参加者が指摘していた。

また、全く新しい条約をつくるか、現行の条約に議定書を追加する形が生産的なのかという問題が討議された。23名の参加者から新条約が必要であると提起されたが、政治的な現実がこれを妨げているとの指摘があった。その結果、議定書をつくることが最善の解決策だということで全体の意見の一致が見られた。しかし、 IWCの中で議定書の改正を行うことは困難だとの指摘や、実質的な改正(例えば、第8条の改定)や反対・留保に関する規定の改正、罰則による混獲規制には実際上、新条約が必要だとの意見もあった。

1982年のモラトリアムに関する政治に対する疑義に対しては、「その当時は調査捕鯨が抜け道となる可能性については全く議論されなかった」との指摘があがった。また、ある参加者からは、グループが本業の周辺を堂々巡りして“取り繕っている”と憂慮する声も上がり、それが政治の感情的な側面であるとし、日本文化や経済における捕鯨の重要性は未だに適切に取り上げられてないとの指摘があった。非捕鯨国の中で捕鯨論議を国内の政治ツールとして活用することが不当に扱われていると示唆された。 

今後の方策 (THE WAY FORWARD)

小規模な “議長の友”グループが作成した議事次第のサマリー・レポート案について参加者が議論した。

下記の通り、幾つかの異なる問題に対する見解が原案に盛り込まれた。

  • IWC会合への閣僚級の参加の奨励  

  • 鯨製品の利用を地元での消費に限定  

  • 会合への日本からの個人参加を推奨 

  • 紛争解決メカニズムや反対手続きの改正を含めた、ICRWの機能改善策を数多く提言  

  • 例えば、科学委員会とIWC本会合の開催時期をもっとずらして余裕をもたせ、政策決定者に対する科学的な助言の提供法を改善 

  • 予防原則と社会経済、文化、倫理的な検討事項に配慮しつつ、プロセスの透明性向上および利用可能な最善の情報に基づく意志決定の実施 

  • 鯨類の非致死的利用の奨励、ホエールウォッチング重視、関連するベストプラクティス特定 

  • 世界規模の鯨類サンクチュアリの重要性を認識、南大西洋サンクチュアリ設定を要請 

  • 南洋捕鯨の速やかな終結と日本の小型沿岸捕鯨に対する配慮をSWG提案に盛り込むよう要請 

  • 捕鯨活動に対する直接・間接の政府補助金制度の検討を各国に要請  

  • 国際的に管理されたDNA検査・モニタリング等の野生動物管理ツールを補完する、モニタリング、法規制、監視、コンプライアンス、施行の実質的な強化 

最初の原案通読会では、支持派と反対派の双方に若干の躊躇がみられた。議論の的になったのは、「南洋捕鯨の終結」および「日本の小型沿岸捕鯨の検討」という二つの文言が記載されたパラグラフである。究極的には一定の小型沿岸捕鯨のかたちが認められるようなことを示唆するような文言は一切支持できないとの意見を出す参加者があった。こうした捕鯨の規模は未確定であり、規制困難で、すでに鯨類にとっては人為的な脅威が存在している海洋に発現することになると述べていた。他方、南洋捕鯨の終わらせるという文言には一切同意しかねるとの意見も出され、「ある側面においてSWG報告書の内容を弱め、ある側面においては内容をもっと明示的にさせているというような反捕鯨への偏向が入っていると感じる」として、この報告書全体に対する危惧を表明していた。 

こうした反応から、今後の進め方と報告書の性格について更なる議論へと進んだ。成果のある全ての国際交渉には“勝つか負けるか”の二者択一ではなく、あらゆる方面で “ギヴ&テイク”の精神が必要であり、協調性が重要であることを反映させるような文言を含めることが提案された。 今回の文書を、全体の合意を示唆するようなPewクジラ委員会報告書と考えるか、あるいは多様な見解やニュアンスを反映させているが内容と重みが薄くなる可能性をもつ議長レポートとして考えるべきかどうかという点について討議が行われた。 

結局、妥協案として、 Bridgewater議長は、当面は議長レポートと見なすとの見解を述べ、参加者には会合終了後、数日以内に書面をもってコメントを提出するよう呼びかけた。また、Pewクジラ委員会の報告書と見なすだけの十分なコンセンサスが存在したかどうかは後の段階になれば明らかになるだろうと示唆した。“マイナーな幾つかのポイント”に関する意見の相違がすでに合意済みの多くのポイントを盛り込んだ文書に対するコンセンサスを阻んでいたことが遺憾だとの意見もあがった。   

閉会にあたって、Bridgewater議長からは、個々人がそれぞれ意見を固持しながらもなんとか良好な関係を保ちつつ作業できたとし、参加者全員の努力を称えるコメントがあった。本会合は市民社会の積極的な貢献の価値を証明するものであり、そうした貢献が議論の知恵の部分として役立ったと述べた。午後6時半をもって閉会した。最終的な議長レポートは下記ウェブサイトから入手可能。http://www.pewwhales.org/pewwhalescommission/ 

(文中敬称略)

今後の会合スケジュール

 気候変動及び鯨類に関するIWCワークショップ: 2009221-25日、イタリア・シエナで開催予定。本ワークショップの主な目的は、気候変動が鯨類にどのような影響を与えているか(または、与えうるか)を特定し、影響を測定するための最善策を究明することにある。鯨類生物学や海洋生態系、気候変動の専門家が参加予定。また、IPCC4次評価報告書(AR4)に記載された気候変動のシナリオに基づき、理解内容を再点検し、鯨類の保全環境の改善をめざす。連絡先: IWC 事務局; tel: +44-1223-233-971; fax: +44-1223-232-876; secretariat@iwcoffice.org; internet: http://www.iwcoffice.org/sci_com/workshops/CLIMATEworkshop.htm 

欧州鯨類学会第23回年次会議: 200932-4日、トルコ海洋研究基金の主催により、トルコ・イスタンブールで“気候変動と海産哺乳類”をテーマに開催予定。 連絡先:トルコ海洋研究基金; tel: +90-216-323-9050; fax: +90-216-424-0771; e-mail: ecs2009@tudav.org; internet: http://www.tudav.org/ecs2009/ 

28FAO漁業委員会: 200932-6日、イタリア・ローマで政府代表による国際会議が開催予定。連絡先: Ndiaga Gueye, FIEL, FAO; tel: +39-6-5705-2847; fax: +39- 6-5705-6500; e-mail: ndiaga.gueye@fao.org; internet: http://www.fao.org/fishery/nems/38478/en 

IWC中間会合: IWCの将来に関する中間会合は200939-11日、イタリア・ローマで開催予定。引き続き同じ会場で、31213日、IWCの将来に関する小作業部会の会合が行われる。連絡先: IWC 事務局; tel: +44-1223-233-971; fax: +44-1223-232-876; e-mail: secretariat@iwcoffice.org; internet: http://www.iwcoffice.org 

海産哺乳類保護区域に関する第1回会議: 2009329-43日、米国ハワイ・マウイ島で開催。米国立海洋大気庁(NOAA)、全米海洋漁業サービス国際局・全米海洋サンクチュアリ局主催。連絡先: Lee-Ann Choy, 会議コーディネータ; tel: +1-808-864-9812; fax: +1-866-211-3427; e-mail:prc@hawaiibiz.rr.com; internet: http://www.icmmpa.org/ 

CITES AC-24: 2009420-24日、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)第24回動物委員会はスイス・ジュネーブで開催予定。連絡先: CITES 事務局; tel: +41-22-917-8139/40; fax: +41-22-797-3417; e-mail: info@cites.org; internet: http://www.cites.org 

世界海洋会議: 2009511-15日、インドネシア・マナドで開催。気候変動との関連で生態系を元に統合化された海洋管理に関する問題に対してハイレベルの注目を仰ぐ。「マナド海洋宣言」の正式採択、そして行動計画、および行動計画を実施する下部機関としての世界海洋フォーラムの設置等が期待される。連絡先:世界海洋会議事務局; tel: +62-431-861-152; fax: +62-431-861-394; e-mail: info@woc2009.org; internet: http://www.woc2009.org/

国際海洋保全会議: 2009519-24日、米国・ワシントンD.Cで開催。同会議の一環として 2回国際海洋保護区域会議が開催される。連絡先:同会議の議長 John Cigliano; tel: +1-610-606-4666, ext. 3702; e-mail: John.Cigliano@cedarcrest.edu or IMCC2009@conbio.org; internet: http://www2.cedarcrest.edu/imcc/index.html

 IWC-61: 2009622-26日、ポルトガル・マデイ�で第61IWC年次会合が開催予定。これに先立ち、科学委員会 (531-612) およびその他の委員会や小委員会が開催される。連絡先: IWC 事務局; tel: +44-1223-233-971; fax: +44-1223-232-876; e-mail: secretariat@iwcoffice.org; internet: http://www.iwcoffice.org
用語集
CITES
IWC
ICRW
NGO
RMP
RMS
SWG

絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)
国際捕鯨委員会
国際捕鯨取締条約
非政府組織
改定管理方式
改定管理制度
小作業部会


Pewクジラ委員会速報は、Earth Negotiations Bulletin © <enb@iisd.org>の発行元でもある国際持続的発展研究所(IISD: International Institute for Sustainable Development) <info@iisd.ca> が発行しています。本号の執筆・編集担当:Nienke Beintema 、 Matthew Sommerville。編集:Chris Spence <chris@iisd.org>. 日本語版:森 明生(Aki Mori)<aki@iisd.org>. IISDレポーティングサービス(ニュース配信)制作責任者:Langston James “Kimo” Goree VI <kimo@iisd.org>. 本会合の取材報道のための資金は、Pew慈善財団・Pew環境グループより提供されています。写真:Kelly Rigg(Pew環境グループ)。IISDへのお問い合わせ先: 161 Portage Avenue East, 6th Floor, Winnipeg, Manitoba R3B 0Y4, Canada; tel: +1-204-958-7700; fax: +1-204-958-7710。本誌に掲載される見解は執筆者個人のものであり、必ずしもIISDの見解を反映するものではありません。また、他の発行物に本誌の抜粋・引用を行う場合は学術的に適切な引用を行って下さい。Bulletin電子版はEメール配信リスト登録者に送信 (HTML版・ PDF版)、 Linkagesウェブサイト<http://www.iisd.ca/>に掲載されます。レポートサービス提供のご依頼等を含む本誌に関する情報のお問い合わせは下記のIISDニュース配信制作責任者宛にお願い致します。(eメール:<kimo@iisd.org>、 TEL:+1-646-536-7556。300 East 56th St. Apt 11A, New York, NY 10022, USA)
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